時代遅れのコピーライターへ。TCCはもうコピーを語らないで欲しい
2016年度のTCC賞の受賞リストが公開されています。
TCCとは、
東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体です。 毎年4月、前年度に実際に使用された広告の中から、優秀作品を選出。その制作者を「TCC賞」受賞者として発表し、秋に受賞作品のほか優秀作品を掲載した「コピー年鑑」を発行。ことばを専門とするスタンスから、日本の広告界のコミュニケーション技術の向上を牽引しています。
1958(昭和33)年に「コピー十日会」として設立され、1962(昭和37)年、TCCへ改名。1963(昭和38)年、「コピー年鑑」発行。
コピーライターのバイブルとして、私も若い頃は広告プロダクションの本棚に並んでいた「コピー年鑑」を片っ端から読んで、参考にしたものです。
90年代の後半頃、CMでの受賞が増えはじめ、「コピー」という言葉でくくれなくなったため、「コピー年鑑」という表記から「TCC年鑑」という表記に変わっています。
ほとんどCMが受賞するようになってしまったこと。
秋山晶、糸井重里、仲畑貴志、一倉宏・・・
掲載されているコピーライターがまったく変わらず、
1年に一度、コピーライターの同窓会みたいになっていること。
などなど、完全にコピーライターの、コピーライターによる、コピーライターのための団体・賞になっていて(そもそもそれで良いのですが)、SPを中心とした実際の仕事の参考にはまったくならないので、ここ20年くらいまともに見ていませんでした。
部下のコピーライターが、会社の経費で買ってくれと言ってきたのですが、「自分で買え」と却下。私も、1990年版1冊だけしか持っていません。
久々に受賞作を見たのですが、さすがに受賞者の名前は一新されていたものの、他の傾向は今まで通り。
その中に、相変わらず秋山晶のコピーが入っているのは、ノスタルジー以外の何物でもありません。
秋山晶、80歳。ライトパブリシテイ代表取締役。2009年、TCC名誉殿堂入り。コピーライターとして一時代を築いた賢人。
仲畑貴志、69歳。TCC会長。80〜90年代にかけて、記憶に残っているコピーのほとんどは彼の作品。コピーライターの暴れん坊。
小野田隆雄、74歳。TCC副会長。資生堂宣伝文化部にて、70〜80年代に名作を残す。
みんなすごいコピーライターばかりです。
で、2016年、TCC賞の募集告知ポスターがこれ。
左から、秋山晶、仲畑貴志、小野田隆雄。
ひどいなぁ。
いくらすごいコピーライターだからって、60・70・80歳のお年寄りにほめられて、本当にうれしいか?
私は若い頃、糸井重里、秋山晶、仲畑貴志、10年後は超えてやる・・・と思ってコピーを書いていました。
残念ながら超えられませんでしたが、その位の気概がなければ、生き残れない世界です。
コピーが上手いやつを見ると、親でも死んで、家業を継ぐため田舎に帰ってしまえ! と思ってました。
一緒に仕事をするデザイナーに対しても、なめられてはいけないと、信頼関係を築けるまでは常に戦っていました。
コピー書いてて、誰かにほめてもらおうなんて、思ったことないぞ。気持ち悪い。
こんなコピーに釣られるようでは、次世代のコピーライターなんてまったく期待できない。コピーライターが育たないから、クリエイティブの裾野が広がっていかない。
それは、私の世代の責任でもあります。というのも、自分が食うので精一杯だったから。
でも、そろそろ本気で後進を育てていかないと、本当にコピーライターという職業がなくなってしまう。
TCC賞のクオリティを見るにつけ、コピーライターの行く末を憂います。