ブレインストーミングは、本当にアイデア出しに有効な方法なのだろうか。

広告制作の現場において、ブレストは新しいアイデアを生み出すために欠かすことができない、儀式のようなものになっています。

新しい仕事が入ってくるたびに、「まずはブレストでアイデアを持ち寄ろう」というのが定番のセリフです。

ブレストとはブレインストーミングの略で、一人ひとりのブレイン(脳)を集結して、ストーミング(嵐)を起こし、そこから新しいアイデアを生み出そうという思考法。

ひとつの仕事に関わっているチームのメンバー、広告制作の場合はコピーライター、デザイナー、AD、CDがアイデアを持ち寄ることで、ブレストはスタートします。

ブレストのルール

1 複数人でやる

自分の頭の中でアイデアを巡らせる、一人ブレストを説いているノウハウ本を見かけますが、本来ブレストは一人でやるものではありません。構成メンバーそれぞれが思い思いのアイデアを出し合いながら、潜在意識を引き出し合うことが重要なポイントとなります。

2 批判をしない

どんなアイデアも絶対に批判をしてはいけません。批判はアイデアの飛躍を妨げ、新しいアイデアの芽を積むことになります。テーブルに乗ったすべてのアイデアを、肯定的に様々な視点から捉えることで、素晴らしいアイデアに生まれ変わる可能性を探っていくのが、ブレストの醍醐味です。

3 全てのアイデアを受け入れる

アイデアに質は求めません。一見、荒唐無稽なアイデアでも、考えを巡らせていくうちに着地点は見つかるものです。荒唐無稽さと着地点の距離が遠ければ遠いほど、面白いアイデアになったりするので、どんなアイデアも捨てることなく突き詰めて考えていきます。

4 数多くのアイデアを出す

最初から正解を求めようとすると、どんどん煮詰まっていきます。なのでまずはアイデアフラッシュとして、どんどんジャストアイデア(思いつきのアイデア)を出しまくる。アイデアを無限に出していくことで、次元の高いアイデアを生み出していく。テーブルに載せるアイデアの量が勝負です。

5 アイデアを融合する

参加しているメンバー、一人ひとりが自由にアイデアを出し合いながら、そのアイデアから得た新しい発想や、他のアイデアとの組み合わせによって、アイデアをどんどん広げていきます。アイデアの大量生産が、ブレストの大きな成果となります。

ブレストのやり方

1 課題を共有する

クライアントから、オリエンや打ち合わせでヒアリングしてきた内容をメンバーですり合わせ。何が求められているのか、課題を共有します。

2 スケジュールを決める

全体のスケジュールを踏まえ、ブレストを行う日を決めます。スケジュールに余裕があれば、1週間くらい間を空けることもありますが、タイトなスケジュールの時には、夜打ち合わせして翌朝ブレスト、なんていうことも、制作会社ではよくあることです。

3 アイデアを考える

メンバーそれぞれが質より量で、思いつく限りのアイデアを考えます。どんな瑣末なアイデアでも相手に伝わらなければ意味がないので、サムネイルというアイデアスケッチを描いて簡単なカタチにします。
かつてコピーライターが描いたサムネイルは、デザイナーから“ゴミネイル”と呼ばれていたことも。

4 アイデアを持ち寄る

制限時間を決め、その中で、それぞれが考えてきたアイデアを説明しながらテーブルに広げていきます。その際に、他の人のアイデアに対して思いついたことも、各々でどんどんアウトプット。その中から新しいアイデアがザクザク出てくる、、、というのがブレストの目的です。

 

当然ながら、なかなかブレスト一発で答えは出ません。制限時間の中で広げたアイデアは、ざっくりと方向性を決めて分類していきます。その方向性を元に、さらにアイデアを出してブレストしていくという作業を、時間が許す限り続けていきます。

 

 

ルール通りにはじめてもルール通りに進まない

広告制作の現場では、頻繁にブレストが行われています。が、私はブレストが大嫌いです。ブレストから素晴らしいアイデアが生まれることなんて、ほとんど経験したことがありません。

なぜなら・・・

こんなブレストはイヤだ!

みんな、誰かが考えてくれると思ってる。

こんなブレストはイヤだ!

だから結局、事前の準備をしていない。

こんなブレストはイヤだ!

そのためブレストの場でアイデアを考えはじめる。

こんなブレストはイヤだ!

基本情報も頭に入っていないので、質より量とはいえ、意味不明なアイデアばかり。

こんなブレストはイヤだ!

苦し紛れに、「商品をメインに立たせる」とか、そもそもアイデアじゃない発言が出てくる。

こんなブレストはイヤだ!

他のメンバーもあまり考えていないので、それに乗ってしまい、「商品アップで」とか言い出す。

こんなブレストはイヤだ!

批判しないのがルールなので、みんな「いいねぇ」という顔をしながらも、誰かいいアイデアを思いついてくれないかと現実逃避。視線は一点を見つめはじめる。

こんなブレストはイヤだ!

ついに誰も発言せず、重苦しい空気だけが漂いはじめる。

こんなブレストはイヤだ!

結局時間切れ。もう少し詰めて考えようと、課題を先延ばしにして終了。

こんなブレストはイヤだ!

意識の高い奴だけがガッツリ考えてきて、一人で50案くらい出してくる。

こんなブレストはイヤだ!

そもそも実は参加者全員、考えるのが苦手。なので50案の中から1案選ぶことにすり替わる。

こんなブレストはイヤだ!

が、冷静に選びはじめると、結局全部使えないアイデアで、途方にくれはじめる。

こんなブレストはイヤだ!

意識の高さとアイデアのクオリティは一致しない。

こんなブレストはイヤだ!

ということがわかっているCDは、ブレストの前に着地点を決めておき、ブレストをコントロールしはじめる。

こんなブレストはイヤだ!

批判せず、みんなで意見を言い合ったという体裁を守りつつ、あるべき方向へアイデアを誘導していく。

こんなブレストはイヤだ!

逆にみんなの意識が高いと、自分のアイデアを通したくてたまらないので、人のアイデアなんて聞いていない。

こんなブレストはイヤだ!

一番大きな声で、自信満々にプレゼンテーションした人のアイデアに決まりがち。

こんなブレストはイヤだ!

カタチにするのはデザイナー。なのでコピーライターのアイデアは、「伝えたいことはわかるけどビジュアルイメージが湧かない」とか「面白いけどビジュアル作るのが難しい」とか、直接的な批判にならない言い回しで却下される。

だからブレストは効果がない

仕事への意識が高く、ブレストのコツがわかっていて、他の人の意見を柔軟に受け入れられる人たちが集まらなければ、ブレストは成立しません。
CD>AD>デザイナー≒コピーライターというヒエラルキーが確立されていて、自己中心的 & 自己顕示欲の強いな人ばかりが集まった広告制作の現場で、成立するわけがありません。
さらに、複数人集まったことでアイデアが飛躍する、なんていう現場も、滅多に体験したことがありません。
ムダに広げたアイデアを分類・整理していくうちに、どんどん画一的になっていき、最大公約数的なアイデアに落ち着くのが常。方向性は合っているし、時間切れなのでまあよしとするか。程度のアイデアしか生まれません。

リアルなブレストの現場から

広告代理店のクリエイティブディレクターとして、私はブレストをどう扱っているのでしょうか。

現実には、ブレストは部下のアイデア出しを促す場として考えています。

アイデア出しって本当にしんどいので、強制的にアイデアを考えさせるきっかけを与えないと、どうしても目の前にある作業を優先してしまいます。
結局上っ面でサラッと考えておしまい。
そういうデザイナー、コピーライターをたくさん見てきました。

クリエイティブを仕事にしていても、アイデアなんてポンポン出てくるものではありません。

ブレストまでに、10案、20案、サムネイルを描いてこいという。
コピーライターには100案くらい、コピーの切り口を考えてこいという。

それでも、10分の1くらいしかアイデアは出てきません。

100案出すのが大切なのではなく、アイデアを考えるプロセスと、その中から答えを見出すコツをブレストで教えていく。

ブレストをする前に、まずアイデアを考える訓練をしなければ、有意義なブレストにはならないのです。

 

ブレストの必要性

ブレストは複数人でやるものだと書きましたが、そこそこの人たちが何人も集まってアイデアを出し合っても、一人の優秀なアイデアマンにはかないません。

冴えたアイデアは、一人ブレストの中から出て来る方が圧倒的に多いです。

そんな一人の優秀なアイデアマンになるために。
優秀なアイデアマンが入っているチームでブレストをして、その人の思考プロセスを間近に見るということにおいて、ブレストへの参加はものすごく有効です。

もうひとつ、秀逸なアイデアは出ないまでも、課題に関してかなり深いところで、参加メンバー間での意思の疎通を図ることができます。

この2点において、ブレストをやる価値はあると思います。

とはいえ仕事への意識が高く、ブレストのコツがわかっていて、他の人の意見を柔軟に受け入れることができる、優秀なアイデアマンだけが集まって行われるブレストも当然ながら存在します。

私もクリエイティブディレクターとして若いデザイナー・コピーライターをしっかりと育てて、そんなブレストができるようにしていかなければ。

超人材不足の広告制作現場で、そんな仕事ができるデザイナー・コピーライターを一人でも多く育てていきたいと思いながら、今日もクリエイティブディレクターとして、制作物の仕上がりをチェックする毎日を過ごしています。

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