残業・徹夜が当たり前の広告業界に、タイムマネージメント:時間管理の概念を。
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クリエイティブに、時間の概念はない。
某クリエイティブディレクター曰く、
コピーライターは、24時間コピーライターである。
20年以上、この言葉通りにコピーライターをやって来ました。
コピーライターにしても、グラフィックデザイナーにしても、時間で仕事をやっているわけではありません。
答えを見つけるまで、考え続けなければいけない。そこにはオン・オフという考え方はありません。
24時間、起きているときは常にオンの状態で、なにかヒントになるものを探し続けています。
例えば電車の中吊り、街にディスプレイされた広告、立ち読みした雑誌、飲み屋での会話まで、すべてが新しいアイデアを生むためのヒントになり得るのです。
打ち合わせをして5分で答えが見つかることもあります。
ギリギリまで考えて、それでも答えが出ず、時間切れすれすれでようやくアイデアが出ることもあります。
1日中考えて、なにも答えが出ないなんてこともざらにあります。
一般的な社会常識の枠の中で仕事をしているわけではなく、納得のいくクオリティに仕上がるまで仕事を突き詰めていく。それがクリエイティブの本懐。
もちろん仕事の締め切りには合わせますが、6時で終わり、というわけにはいかない。
そもそも、まったく時給換算できない仕事なのです。
クリエイティブもタイム・イズ・マネー
とはいえ、今ではコピーもデザインも、クオリティよりスピード&コスト優先。
制作単価が下がりすぎて、じっくり時間をかけていたら仕事になりません。
クリエイティブのこだわりを持って、クオリティを上げたい。
作業のスピードをアップして、仕事の数をこなしたい。
新しい仕事を取るための提案や、スキルアップするためのインプットの時間も欲しい。
でも現実は目の前にある仕事に追われ、締め切りに追われ、ギリギリでこなしていくだけの毎日。
そんな中でもクリエイティブな仕事を生み出すためには、時間をきちんと管理して、オペレーション的な仕事をできるだけ効率よく終わらせて、アイデアやクオリティをブラッシュアップする時間を確保することが必須なのです。
知っておかなければいけない、タイムマネジメントの基礎知識
というわけで、コピーライターも、グラフィックデザイナーも、目の前の仕事をやっつけていくだけでなく、タイムマネージメントという概念を、仕事に取り入れていく必要があります。
当然時間で管理できない仕事も多々ありますが、タイムマネージメントの基本的な考え方を頭に入れて仕事をするのとしないのとでは、先の結果に大きな差が生まれてきます。
電通の残業問題にしても、広告業界の黎明期から蔓延る、“時間を管理する”という概念の欠落から生まれているわけで、残業が必要悪から不必要悪へと変わろうとしている今となっては、広告代理店や広告プロダクションにとっても、解決しなければいけない最大の課題となっています。
日々の時間管理が必要とされている、昨今のクリエイティブを取り巻く環境に対応することも必要なのですが、
大量の仕事に流されず、良い仕事を生み出すための時間をつくる
この一点においても、これからのクリエイターにとって、タイムマネージメントは必須のスキルとなっています。
タイムマネジメント初歩の初歩
その1 時間泥棒から身を守る。
電車の速度にネットの速度、情報の速度に1日が終わる速度…
身の回りにある様々なものがどんどん加速しているにも関わらず、私たちは常に、
「時間がない。」
とか、
「もっと時間があれば」
と、時間に追われて生きています。
『時間』はいつも足りないもの。
それでいて、なかなか自分の力で時間を作る努力はしていません。
毎日の、いつもの習慣の中で、自ら時間を生み出す行動をしなければいつまでたっても時間に追われ続ける人生を送ることになります。
とはいっても、、、
毎日届く山のようなメール
どうでもいい書類のチェック
ムダ話ばかりの会議
クライアントからの突然の電話
使えない部下からの相談
といった時間泥棒が、あなたの時間をどんどん奪っていきます。
時間は、なにものにも代えられない貴重な資源。
少しでも生産性の高い時間を取り戻すために、時間泥棒から身を守る必要があります。
では、一番の時間泥棒は誰なのか。
一番の時間泥棒は、部下でも、上司でも、クライアントでもありません。
一番の時間泥棒・・・
それは『自分自身』です。
“時間がない”というのなら、時間を確保する方法を考えることから始めてみましょう。
どれだけ自分が貴重な資源である『時間』を浪費していたかに気付くはずです。
では、どうすれば時間を確保できるのか、、、
〈時間確保のヒント〉
◎通勤時間を使う
居眠りしたり、スマホでゲームしたり。そんな通勤時間を、中吊り広告を見たり、ニュースを読んだり、情報をインプットする時間にあてることができます。
電車に乗って座席が空いていても、座ってはいけない。
これも、コピーライターに成り立ての頃、クリエイティブディレクターに言われたことです。普段から徹夜続きで仕事をしているので、座ったら寝てしまう。その時間がもったいないというわけなのですが、さすがにそれは守ったことがありません。
◎昼休みを使う
ランチタイムも、スマホでニュースやwebサイトをチェック。常にネタ探しを怠らない。コピーライターをやっていると、空いた時間に食べるということがほとんどで、定時に昼休みという概念はないのですが、仕事と仕事の合間にできた空き時間も、意識すれば有効に活用できるものです。
◎テレビを見るのを止める
テレビ離れといわれていますが、それでも日本人全体の一日の平均視聴時間は3時間を超えています。
ほとんど見ないという人でも、30分から1時間くらいはテレビを見ているはず。
テレビを観るのを止めるだけで、かなりまとまった時間がつくれます。
その2 “時間”を記録する。
時間は限りある資源です。
ところが、いくら浪費しようが、節約しようが、日が変わればまた同じように“24時間“が訪れるため、
「明日やればいいや」
を積み重ねていくことになり、結局なんの成果も生み出せず、闇雲に時間だけが過ぎていく…何ていうことになりがち。
〈時間確保のヒント〉も、いざやろうとしてもなかなか継続できず、テレビを見てしまうたびに「自分はなんて意志の弱い人間なんだろう…」なんて落ち込んでしまって、かえってストレスの原因になってしまいます。
そんな日々を改善するためには、時間をきちんと記録すること。
まずは朝、仕事を始める前に今日1日のタイムスケジュールを決めましょう。
そして、実際にどう使ったかを記録しましょう。
そうすると、自分の時間の使い方が見えてくるようになります。
大切な仕事にどれだけ時間を費やすことができのたか。
ムダな時間はどれくらいあったのか。
自分のために使えた時間と、誰かのために奪われてしまった時間はどれくらいあるのか。
そこから少しずつ非生産的な時間を減らす工夫をしていき、生産性の高い時間を増やして行くのです。
「時は金なり」
といいますが、生産性の高い時間を作ればその分だけ、現実に利益は還元されるものなのです。
その3 時間をコントロールする。
時間を効率よく使いこなすためのタイムマネージメントにはさまざまな方法がありますが、いきなり高度なものをはじめるとかえって作業効率が落ちます。
まずはすぐに始められるシンプルな方法から試してみてください。
1)毎朝、今日1日やるべきことを書き出して、チェックリスト〈To Doリスト〉を作ります。
2)〈To Doリスト〉に、優先順位を付けます。
優先順位の考え方として、〈To Doリスト〉を
A.急ぎで重要
B.急ぎではないけれど重要
C.重要ではないけれど急ぎ
D.急ぎでも重要でもない
に分類します。
大抵の人はA→C→B→Dの順に作業をこなしていきますが、
これをB→A→C→Dでこなせるように意識して優先順位を付けるようにしてください。
B.急ぎではないけれど重要
を優先してやることによって、
A.急ぎで重要
は少なくなっていくはずです。
3)〈To Doリスト〉に対して費やす時間を設定し、1日のタイムスケジュールに落し込みます。
4)とは言っても、その日の気分による作業スピードの違いや突発的な用事によって、タイムスケジュール通りに
すすまないことがほとんど。できなかったことは、翌日に回します。
5)翌朝、前日できなかったことの見直しを含め、今日1日やるべきことを書き出して、チェックリスト〈To Doリスト〉を作ります。
1)〜5)のワークフローを毎日繰り返していくことによって
少しずつ無駄な行動がみえてくるようになります。
タイムマネージメントの目的は、最優先事項を優先してやること。
自分の意志なく作業をすると、大抵A→C→B→Dの順になってしまいます。
ですが、どんなに頑張っても、A、Cがなくなることはありません。
そのためいつまでたってもその先にある大事な「B」を先に進めることができないのです。
B→A→C→Dの順にこなせるようにスケジュールを工夫して実践していけば、少しずつ結果は付いて来るようになります。
おまけ
というわけで、部下のコピーライター&グラフィックデザイナーに、タイムマネージメントとは何か、の基礎知識を伝えようと思い、社内セミナーを開催しました。色々なところで学んだタイムマネージメントを、できるだけシンプルにまとめて伝えたのですが、ビジネスマンにとっては当たり前の〈第2領域〉優先の話も、コピーライターやグラフィックデザイナーには無縁の話でした。その際に作成した資料を公開させていただきます。結論はケースバイケースですが、参考にしていただければ幸いです。