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横浜・老舗バーめぐり。絶対に押さえておきたい、酒好きのための3店

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バーで一人、グラスを傾ける。

そんなカッコいい大人に憧れて、夜の横浜を徘徊した20代。

行きつけのバーができて、毎夜一人でグラスを傾ける、憧れの大人になれたのもつかの間、度が過ぎてただのアル中になってしまいました。

20年以上の時が経ち、曙町にあったそのバーはファッションヘルスとして生まれ変わり、当時通っていたお店もほとんどなくなってしまいましたが、今も変わらず、ずっと残っているお店も数多くあります。

横浜はバー発祥地といわれ、半世紀を超えて営業しているお店も残っています。

店内に入ると、そこだけ時間が切り取られたような、昔のままの佇まい。

雰囲気だけで酔える、横浜老舗のバーを紹介します。

Contents

STARDUST/1954年創業、スターダスト。

このお店を知ったのは、栗本薫原作の角川映画「キャバレー(1986年)」を見て。ヤクザのいざこざの話で、内容は覚えていないのですが、野村宏伸がSAXでレフト・アローンを吹くシーンがカッコよかったことと、舞台として使われたスターダストがカッコよかったということで、まだ未成年だった私が、Barに憧れを持つきっかけになった映画でした。

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お酒を飲むようになって、行きつけのバーもできたものの、徘徊していたテリトリーはほぼ伊勢佐木町界隈。
同じ横浜にありながら、スターダストに行くきっかけが、まったくありませんでした。

そもそも「スターダスト」は瑞穂ふ頭の手前の海っぺりにあって、瑞穂ふ頭にあるアメリカ海軍の施設からの船員を相手にしていたバー。

横浜駅からひと駅東京寄りの東神奈川駅から徒歩で10分弱のところにあるのですが、東神奈川駅周辺には何もない。「スターダスト」までの道にも何もない。あまりに何もなさすぎて、本当にこの先にお店があるのかと思えるくらい。

「スターダスト」に行こう!

と思わなければ、近くに行くことすら滅多にない、かなり不便なところにあります。

ところがたまたま、早い時間 〜17時くらい〜 から伊勢佐木町で飲んでいて、一緒に飲んでいた友人と、「スターダストって行ったことある?」という話になり、二人とも行ったことがなかったため、車で一路「スターダスト」へ(25年以上前の話です)。

伊勢佐木町から関内の駅前に出て、線路にそってひたすらまっすぐ。青木橋から15号に進み、神奈川二丁目の交差点を右に曲がった突き当り。その先は塀の向こうのアメリカ。

10分弱。

とっても近かった。

外から見た「スターダスト」は、昭和世代が憧れたアメリカングラフィティーのセットのまんま。超クール。ふ頭の端っこ、すぐ裏手まで海が迫ってきています。The ‘60sなネオンもテンションが上がります。

「あぶない刑事」「女々しくて」「西部警察」などなど、映画やドラマ、PVのロケに使われることが多いのも当然。

中に入ると、想像以上に広い。バーって狭くて暗くて落ち着いたイメージがあるのですが、スターダストは広くて明るくて陽気。時間に磨かれたステーキガストみたいな感じ。必須アイテムの、オールディーズが詰まったジュークボックスも、もちろん完備しています。

18時前だったので、他に客の姿はありませんでした。

友人と二人、カウンターに座り、ジントニックを注文。

・・・広すぎて落ち着きません。

30分でジントニックを空け、まだ日が沈みきらないうちに店を後に。広くて明るくて客のいないバーは、居心地が悪いということを知りました。

以来、まったく行く機会がないのですが、港・アメリカ・お酒・音楽・・・“The 横浜”に浸りたいなら、一度は絶対に行って見るべきお店です。

店を出る頃にはすっかりアメリカナイズされ、ジェームスディーンばりに、スウィングトップで風を切って歩きたくなります。

 

Paris/チェリーブロッサム発祥地=横浜のパリ。

1992年。

5人も並べばいっぱいになる、小さなカウンターだけのバー。

イスのないオールスタンディングタイプ。要は立ち飲み。

カウンターの中にはシェーカーを振っている、和服姿のおばあさん。

注文するのはチェリーブロッサム

〈レシピ〉
◎チェリー・ブランデー = 30ml ◎ブランデー = 30ml ◎レモン・ジュース = 2dash(約2ml)〜2分の1tsp(約2.5ml) ◎オレンジ・キュラソー = 2dash〜2分の1tsp ◎グレナディン・シロップ = 2dash〜2分の1tspをシェーク

チェリーブロッサムは、知る人ぞ知る、「パリ」発祥のカクテル。

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1923年、大正時代に創業したこの店のオーナー、田尾多三郎氏によって考案され、海外で開催されたカクテルコンテストで優勝し、世界に広まっていったと、和服姿のおばあさん、もとい2代目オーナー田尾氏の奥様が話してくれました。

当時いくつなのかは聞けませんでしたが、19歳の頃からシェーカーを振っているといってました。

チェリーブロッサムがカウンターに差し出されます。

ショートグラスで出されたお酒は、冷えている間に4口くらいで飲まなければいけないと教えられ、言われた通り4口でグラスを空に。

チェリーブロッサムを飲むのは初めてだったので比較はできませんでしたが、これが世界中のどこのバーで飲むものよりも本物の味なのかと、お酒を飲んで初めて、感動を覚えました。

二杯目はドライマティーニを注文。

当時オリーブといえば、明治屋で売っている瓶詰めのものしか入手できず、いいオリーブが手に入らないからとパールオニオンのピクルスを代用していました。

ドライマティーニを一口飲む。

その後でオニオンを少し囓って、ドライマティーニで流し込む。

残りのオニオンを食べてドライマティーニを口に含み、一緒に飲む。

残りのドライマティーニで口の中をスッキリさせる。

飲み方を教わり、4口、正味3分でグラスを空に。

 

再度チェリーブロッサムを注文。

 

ショートカクテル3杯、連れも同じだけ飲んで、4人で計12杯。

1時間足らずででチェック。

計4万5千円也。

高いよ。

どこぞのボッタグリバーのような値段。

それでも酔った勢いと、本物なのだからしょうがないと言い聞かせて、会計を済ませました。

しばらくしてふたたび、行きつけのバーのマスターと2人で軽く一杯だけ飲もうといってぶらりと「パリ」に入り、僕はやはりチェリーブロッサムを注文。マスターはバーボンソーダを注文。

カウンターに差し出された酒を一気にあおって5分でチェック。

2杯で2万5千円也。

関内の京浜東北線から海側は、土地が高いこともあって店の賃料がバカ高いです。
だから、席料(チャージ)を取らないとやっていけないのはわかるのですが、それを踏まえても、一杯1万円オーバーのカクテルなんて、まさか老舗のバーでぼったぐられるとは思いませんでした。

さすがに3度目は行けないまま2代目も亡くなり、しばらく閉店していたけれど、今でも家族が継いでお店は存続しているようです。

今はそんなに高くないみたい。

機会があればもう一度飲みに行き、あのバカ高かった値段の理由を教えてもらいたいと思っています。

 

Chrysler/クライスラーで昭和へタイムスリップ。

館内側から伊勢佐木町商店街に入り、ブックオフを右に曲がると街は一転、如何わしさ満点の歓楽街、福富町に入ります。
ぼったぐりバーや売春クラブが地雷のように点在し、さらにはいつのまにか韓国人街の様相を呈するようになっていてカオスぶりを促進。さらに街の彼方此方にヤバそうな人たちが立っており、その類いの事務所もそこら中にあって、用があっても近づきたくない(近づいてはいけない)エリアになっています。

その街のど真ん中、ソープランドが連なるあたりの老舗の安キャバレーの目の前に、いかにも怪しげな狭い階段があります。

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恐る恐るその階段を上ると、さらに怪しい重たい木の扉。知らずにその扉を開けるのは、相当勇気が必要。いや無理。私も初めは、知人に連れて行ってもらいました。

意を決して、オーク樽のごとく重厚なその扉を引くと、その向こうには、時に磨がかれ、熟成されたビンテージな空間が現れます。

クライスラーは、1950年開店。空襲を受けて焼け野原になった伊勢佐木町で、戦後最初にできたバーです。

入口正面から右手に伸びるカウンターから、その奥のテーブル席まで、その壁面にはびっしりと、モザイク模様のようにプレミアムボトルがぎっしり。

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カウンター左側の壁には、ロンドン、ヨコハマ、ニューヨーク、ホノルルの時間を刻むアナログ時計と、おそらく開店当初からすっかり時が止まっているメニュー表。

天井からトイレまで、アンティークなトレイやコースターがびっしりと張り巡らされ、唯一無二の世界観を演出しています。

「過去、現在、そして未来の間の区別は、単なる幻想にすぎない。たとえ、その幻想が非常に強いものであるとしても。」

そんなアインシュタインの言葉を具現化したかのような、時間の概念が目の前に現れます。

クライスラーに行けば、どんな酒を飲むよりも、時間と空間に酔えること間違いありません。

「スターダスト」や「パリ」は、もう行くことはありませんが、「クライスラー」だけは今でも横浜に飲みに行くと、必ず立ち寄る一軒。

すでに25年以上通っているのですが、カウンターの中にいる女性が、まったく変わっていません。

まさに“時”を切り取った店なのです。

 

最近のお店はあまり知りませんが、昔ながらのよいお店・横浜ナイトツアーをお考えの方は、ぜひ声をお掛けください!

オールでご案内しますよ!

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