満島ひかり×安藤サクラ。最狂の日本映画、愛のむきだしを見よう。
という主旨のブログを書いたばかりなのですが、実は1本だけ琴線に引っかかってしまった邦画があります。
園子温監督の
知ってる人からは「なにを今さら」と言われそうな、ものすごく話題になった問題作です。
園子温監督の他の作品は観てません。
刹那的に暴力的な映画は大嫌いなので。
だから北野武の映画も一本も観てません。
でもたまたま、一緒に仕事をしていたクリエイティブディレクターとデザイナーから同時にすすめられたので、TSUTAYAで借りて観ることに。
「愛のむきだし」の上映時間はなんと3時間57分。映画2本分。なのでDVDも2枚に分けられていて、上巻はあったのですが、下巻は貸し出し中。一気見したかったので、下巻が返却されるまで1週間、おあずけを喰らってしまいました。
親の死、狂信、暴力、盗撮・・・ストーリーめちゃくちゃです。
登場人物、全員狂ってます。
レビューするのもバカバカしいくらい、虚実妄想混沌純愛。
最初の頃は、宗教臭くって安っぽい家庭崩壊ドラマ。ハズレ感満載です。
突っ込みどころがいっぱいで、安っぽい演出も散見されるのですが、それも恐らく、すべて計算のうち。
もしくは大いなる偶然。あらゆる負の要素が渾然一体となって展開されていくのですが、観ているうちに、映画全体のグルーブに包まれ、その世界観にどっぷりとはまっていきます。
そのグルーブを生み出している要素のひとつが、ゆらゆら帝国の音楽。
映画の世界観と渾然一体となったグルーブは、完全なるトリップを誘います。
このアルバムの完成度があまりにも高過ぎたため、その後アルバムを発表することなく、ゆらゆら帝国は解散してしまいました。
さらにスゴイのが、メインとなる3人の役者。
主役はAAAの西島隆弘。なんでいまだに役者で評価されるような仕事をしないのか不思議なくらい、好青年から変態、精神崩壊まで、無茶苦茶な役を演じきっています。
もう一人の主役は、満島ひかり。
ドラマ『カルテット』でも高い評価を得ている演技力と会わせて、彼女の存在感の凄さはいうもでもありませんが、「愛のむきだし」の満島ひかりのむきだしっぷりは、荒削りな分、最近の彼女の演技を凌いでいます。この映画ではじめて満島ひかりを知ったのですが、パンツ丸出しで圧倒されっぱなし。
彼女に「カートコバーンよりキリストの方がいい男」なんてっていう台詞をさらっと言われちゃった日には、惚れてしまうしかありません。
というわけで、邦画はキライだけれど、「愛のむきだし」を観た後、満島ひかり見たさに何本か出演映画を鑑賞。
「クヒオ大佐」「プライド」「食堂かたつむり」「悪人」・・・やっぱり邦画はダメでした。
そしてもう一人、西島隆弘と満島ひかりにつきまとっているのが安藤サクラ。
奥田瑛二×安藤和津という血統の良さなくしても、壮絶な役をリアリティいっぱいにこなし、ギラギラに輝いています。
2015年度・第39回日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞をとった「百円の恋」も、ダメ女っぷりが凄かったけれど、「愛のむきだし」の安藤サクラは狂気です。街で見かけたら、きっと恐くて逃げます。
そんな、若くして演技力&存在感が尋常ではない3人が、愛をむきだしにしてぶっ壊れていき、そして再生する。
3時間57分というバカみたいに長い上映時間が、あっという間に過ぎていきます。
なぜ今、愛のむきだしなのか。
というわけで、2009年の映画を「何でいまさら」ブログに書いたのかというと、なぜかいまさら「愛のむきだし」がドラマ化されたから。しかも新たに製作したのではなくて、映画に使われなかったシーンを使って5時間まで引き延ばし、全音楽・音響を再構築、30分×10回のドラマにリブート。
J:COMプレミアムにて、2月4日・11日の2日に分けて4話連続+6話連続で独占配信・放送されたのです。
J:COMに入ってて良かったぁ。
ドラマにする必要はなかったのではないかと思うのですが、あらためて見ると、満島ひかりもスゴイのですが、やっぱり安藤サクラの存在感がハンパない。どちらも凄すぎるので、映画では安藤サクラをちょっとだけ控えめにしているようです。
あっという間の5時間。
内容を説明しても、映画の魅力を説明しても、恐らく伝わりません。でも、観る機会があったら絶対に観るべき、唯一無二の日本映画です。
日本映画だって、捨てたもんじゃない。
というわけで、先だって日本映画を全否定するようなブログを書きましたが、見るに値する映画もあるわけです。
今となっては3人の役者の知名度が上がってしまったこともあって、ニュートラルには見られませんが、それでも役者の新鮮さ、ストーリーの予測不能さは群を抜いています。
映画っぽさは、結局分割してドラマにしちゃうくらいなので、ちょっと薄め。カメラワークは映画っぽく凝ろうとしているところもあるのですが、普通に見ていたら気がつきません。とはいっても内容の過激さと微妙なエロさで、テレビで放送できる内容ではありません。
映像も、ストーリーも、演出も、台詞回しも、かなりチープ。それでも面白いモノは、やっぱり面白いのです。
1982年、アメリカでアタリショックという、家庭用ゲーム市場の崩壊がおこりました。
アタリという会社が発売していた、爆発的に売れていたゲーム機があったのですが、粗製濫造されたゲームソフト、いわゆる「クソゲー」が乱発され、ゲーム市場の価値が急落。アタリをはじめ、数々のゲーム関連会社が倒産してしまったのです。
日本映画も同じ。クソ映画が粗製濫造されすぎて、いい映画を見つけられない。
映画業界と癒着している映画評論家たちの高評価を得ている映画や、嘘で塗り固められたプロモーションのおかげで巷で大ヒットしている映画が、自分にとっての、いい映画なわけがありません。
映画そのものには、いい物もあれば、悪い物もある。ただし、悪いモノが圧倒的に多すぎる。前述のブログ記事の通り、日本映画にはある種の偏見を持っているので、わざわざいい映画を探す気がしない。
日本映画がキライなのは、日本映画の市場自体にも、大きな要因があるのです。
そんな中でも、たまたまいい映画を見つけられると、とってもトクした気分になれます。