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1本のキャッチコピーを書くために、100本書くことの効果・効能。

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キャッチコピーを書けるようになるために、まずは数を書くこと。
目安として最低100本。

私も、コピーライターになりたての頃は、1本のコピーを書くために、朝から晩までずーっと原稿用紙に向かって、何百本もコピーを書いていました。

コピーライターなら誰もが通る道なのですが、それで果たして本当にコピーが書けるようになるのでしょうか?

糸井重里は、

100本も書く必要はない

といっています。私も今では100本なんて書きません。

でも、これからキャッチコピーを書けるようになりたいと考えているのなら、書かないよりは、書いたほうが良いです。

なぜ100本書いたほうが良いのか。その理由を3つにまとめてみました。

Contents

使いこなせる語彙を増やす。

100本のコピーを書くためには、頭の中にある言葉だけでは到底間に合いません。

まずは雑誌を見て、新聞を見て、ネットを見て、使えそうな言葉を書き出して集めます。

そこで、なんとなく引っかかった言葉を、キャッチコピーにならないかどうか、いろいろな角度からいじくりまわしてみるのです。

これだ!

と思えるコピーが書けるまで、まずはこの繰り返し。そうすると、使える言葉が増えていきます。

コピーライターは、言葉をたくさん知っているだけでなく、その言葉を使いこなせなければいけません。

自在に使える言葉をストックするために、まずは100本といわず、がっつりと書くことが必要なのです。

アイデアを考える頭を鍛える。

100本のコピーを書く際に、どうしてもやってしまいがちなのが、

言葉の順列組み合わせによるバリエーションで数を稼ごうとすること。

例えば、「このやさしさは、あなたのために。」「あなたにもっと、やさしくしたいから。」「あなたのために、やさしくなりました。」

これって、3本ではなくて1本です。切り口の違う表現になっていなければ100本書く意味がありません。

 

もうひとつ、手垢のついた言葉や表現を使ってしまうこと。

どこかで見たことがあるようなものや、既存のコピーの“て・に・お・は”を変えただけのようなコピーを書いても、やはり意味がありません。

 

100本のコピーを書くということは、100通りのアイデアを考えることです。

糸井重里が“100本書く意味がない”といっているのは、言葉遊びや並び替えにハマって、考えることを疎かにしてしまうから。答えが出るまで考え続けることができるのなら、100本も書く必要はありません。
そして糸井氏はアイデアの粗製濫造も懸念されていますが、初めの頃は粗製濫造すらできません。

コピーを書きはじめた頃は、どうやってアイデアを出せば良いのかわからない。コピーを考え続けることもできない。そこで100本アイデアを絞り出すという負荷を与えることによって、脳の筋力を鍛えていくのです。

コピーを見分ける目を養う。

いいコピーがなかなか書けない。その最大の理由は、

いいコピーの見分けがつかないから。

駆け出しの頃、書いたコピーは当然先輩のコピーライターに見てもらうのですが、その際に“いいね”といってくれるコピーと、自分で“いいな”と思っていたコピーって、まったく違います。

主観でしか見られていなかったり、言葉の選び方に思慮が足りなかったり、語感だけで中身がなかったり、その理由は様々なのですが、そんな状態で100本書こうが、1000本書こうが、世に出せるコピーが書けたかどうかの判断ができるわけがありません。

さらにビジュアルと組み合わせた時に、まったく印象が変わってしまうこともよくあることです。

 

最初に勤めた広告プロダクションで、私がはじめて新聞の全10段のキャッチコピーをまかされたときのこと。何本コピーを書いても、一緒に組んで仕事をしていたAD(アートディレクター)はOKをくれませんでした。

30本ぐらい書いてはADに持っていくのですが、「もう少し考えてみようか」と突き返されます。そのまま、ADとともに徹夜。そして朝8時頃、ふっと書いたコピーを見て、はじめて「いいコピーが書けた!」と思いました。

それをADに持っていくと、ようやく「うん。これで行こうか。」と、ようやくOKを出してくれました。

そのコピーと数本の代案を、広告代理店のCD(クリエイティブディレクター)にFAXで送信。そのCDは、JRA(日本中央競馬会)の広告などで賞をとりまくっていた、超一流のコピーライターだったのですが、「書けた!」と思ったコピーとは別のコピーを選んできました。本当にコピーって難しいです。

「いいコピーが書けた!」という手応えを感じていくうちに、コピーの良し悪しがわかるようになり、コピーの精度も上がっていきます。

人の書いたコピーを見ることも大事ですが、自分がどれだけ答えを見つけられたかで、コピーを見る目は鍛えられていくのです。

100本書くことのデメリットは?

“アイデアを考える頭をつくる”のところで書いたように、100本書くと決めてしまうと、苦しくなってきたときに、単なる言葉の縦列組み合わせや、アイデアのない既製品のコピーでかさ増しをしはじめます。

コピーを書く目的が、いつしか“100本書く”ということにすり替わってしまうのです。

100本書くことが重要なのではなく、重要なのはコピーを考えるプロセス。頭の中でぐるぐると考えて、はじめの1本で答えが出せるのであれば、それはそれでOK。あと99本、ゴリゴリと言葉を削って磨くのはムダな作業になります。

とはいっても、コピーの正解はひとつではないので、試行錯誤はするべきですが。

100本書けば、キャッチコピーが書けるようになるのか。

以前、コピーライターの新卒採用で、商品のキャッチコピーを何本でもいいから書くようにという課題を出したことがあります。

20人くらいのエントリーで、100本書いてきたのは3人だけ。そして2人はやはり、言葉の順列組み合わせを変えただけだったり、既製品のコピーばかりでした。

でも、1人は100通りの切口でコピーを書いてきて、しかもどれでも使えるような高いクオリティのものばかり。諸事情あって採用には至らなかったのですが、ライトパブリシティだって欲しくなるような優秀な人材でした。

当然、100本書いてきていない残りの人たちの中に、キラリと光るものを見つけることはできませんでした。

 

また、今までに何人も、そして現在も、自分の部下としてコピーライターを抱えています。恐らく20人以上面倒を見てきていると思います。

コピーライター養成講座に通っていたコピーライターも大勢いましたが、キャッチコピーを書く際に、100本書いてきたコピーライターは1人もいませんでした。50本すら書いてきません。

彼らは、たまにフロック(まぐれ)で、良いコピーを書くこともありますが、コンスタントに良いコピーを書くことができません。

どんなオーダーにも、きちんと答えられるのがプロの仕事。フロックに頼ってクオリティがブレては、仕事になりません。

 

100本書いてもキャッチコピーを書けるようにはならないけれど、

100本すら書けなければキャッチコピーは書けない。

 

豊富な語彙を持ち、アイデアが次々と湧き出てきて、すぐに良いコピーが発見できる。

そうでない人は、一度は通るべき道です。

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