コピーライターになるための、インタビュー記事ライティング心得。

 

私のコピーライターとしての初仕事は、インタビューの同行でした。

クリエイティブディレクターだった父と、父の知り合いのカメラマンと私の3人で、向かったのは緑山スタジオ。

取材にカメラマン同行は必須です。ライターが写真まで撮ることがありますが、コピーライターはカメラマンではありません。文章を書くこと、写真を撮ること、それぞれプロに任せるのがプロの仕事です。予算が取れる取材になると、ヘアメイク・スタイリストまで付けることもあります。

化粧品関係の仕事で、インタビュー相手は、由紀さおりさんでした。
私は流暢にインタビューを続ける父の横で相づちを打っているだけで、なにも話かけることはできません。メモをとっている真似事だけ。
30分くらいのインタビューだったのですが、父の横でカメラマンがバシャバシャとシャッターを切っていいたこと以外、まったく覚えていません。

コピーライターをやっていると、キャッチを書いたり、商品説明を書いたり、セールスレターを書くだけでなく、インタビューから文章を起こす仕事も発生します。

 

インタビューが必要になる仕事

記事広告・広報誌・情報誌・会社案内・入社案内・学校案内 等

キャリアは長くても経験不足なコピーライターは、インタビュー記事を書かなければいけなくなったときに、大きく躓くことになります。

私の部下のコピーライターは、20年以上のキャリア(それも超一流のプロダクションに在籍していた)がありながら、まともに記事を書くことができず、クライアントからクレームの嵐。それでもプライドがジャマをして書けないないとは言わず、最終的にウツになって頭がおかしくなってしまいました)

インタビューから文章を起こすことって、実はものすごく難易度が高い作業なのです。

 

インタビュー前に準備しておかなければいけないこと

□スクリプト・質問リスト
インタビューには当然その目的があるわけで、まずは目的を果たすために、なにを語ってもらうのかというスクリプト(台本)をきちんと用意しておく必要があります。

紙面のボリュームに合わせて、導入から締めまでの構成をある程度考えておく。
その構成に合わせて、インタビュー内容をリストにしておく。

あくまでもクライアントからの依頼で、プロの仕事としてインタビューするわけですから、重要なポイントを聞き逃し、文章を起こそうと思った際に締まりのない内容になってしまう、なんていうことは間違っても起こしてはいけないのです。

そのためには、前もってインタビュー内容に関してある程度精通しておくことと、相手のことを知っておくことが重要です。

□インタビューシート
また、話慣れていない相手や、どういう相手か分からない場合は、事前にインタビューシートを渡しておいて、どういう目的でインタビューをするのか、それについてどういう質問をするのかをあらかじめ伝えておいて、話すことを考えておいてもらうことも、インタビューをスムーズにすすめるための大切な準備のひとつです。

インタビュー時に必要なもの

□レコーダー
レコーダーは、取材用のものが安く売っているので、それを使います。
私は予備として、スマホのレコーダーにも録音しています。
途中で電池がなくなったり、雑音だらけで聞こえなかったり(最近のレコーダーは性能が良いので、そんなことは起きませんが)、操作ミスで録音できていなかったとしても、もう一度同じインタビューをするのは不可能。リスクは完全になくしておくべきです。

□筆記用具
メモ帳には質問リストを書いておき、もれがないようにチェック。また、インタビュー中にポイントとなる言葉が出てきたときは、きちんと書き留めておくと、編集時に文章をまとめやすくなります。

□時計
相手は大切な時間を割いて、インタビューに応じてくれています。
インタビュー時間内にきちんと質問を終えるために、時間のチェックも必要です。

インタビュー時にこころがけること

これは、相手によって変わってきます。
相手のパターンは大きく3つに別れます。

1 著名な人物

芸能人やスポーツ選手はもちろん、ネットで名前を検索すれば、そこそこ情報が見つけられるような人の場合。
相手のことをきちんと調べておくことはもちろんですが、相手の個性を引き出しながら、他では語っていない情報を引き出すことを心がけます。
基本的には話すことに慣れているので、的確な質問を投げかけるだけで、後は勝手に話してくれます。相づちをうちながら、キモとなる質問を投げかけるタイミングを計りましょう。

以前保険会社の情報誌の特集記事で、交通事故で両足切断という大ケガを乗り越えたパラリンピックの選手にインタビューをしたときのこと。上司から「事故の時に保険はどうしたか聞いてきて」と言われたのですが、さすがに面と向かって聞けるわけがなく、インタビュー後の雑談で、ようやくさらっと質問することができました。
インタビュー後のリラックスした雰囲気の中から、ホンネの話やここだけの話が聞けることも多いので、別れるまでレコーダーは止めないようにしましょう。

2 ステイタスのある人物

会社の社長や理事長、教授といった、著名ではないけれど一角の人物に対するインタビュー。コピーライターとして一番多いのがこれ。
当然会社や人となりの下調べは必要ですが、名刺交換からはじまって、服装から言葉遣いひとつまで、ビジネスとしての礼儀も重要になってきます。ともするとコピーライター(クリエイター)という人種は、社会人としての常識に欠けている人が多いので、当たり前ではありますが、礼を失しないことが大切。インタビューに関しては、著名な人同様、たくさん話をしてくれる人が多いのですが、専門的な話も多いので、きちんとした下調べをしておかないと、話についていけなくなるので要注意です。

3 一般の人

一番難しいのが、一般の人へのインタビュー。
例えば、会社案内や学校案内を制作する際に、現場の声として掲載するために、社員や学生にインタビューすることがあります。
商品やサービスに対するお客様の声も、基本は書いてもらうことがほとんどなのですが、希に体験イベントや仕込みの記事として、インタビューが必要になる場合がでてきます。
そういった人たちは、当然インタビューになれていないので、緊張感をほぐすところからはじめるのですが、これが結構大変。そもそも私は見た目に威圧感があるので、相手はかなり身構えてしまいます。

なので実のところ、いまでは若いライターに任せてしまっています。

さらに、これは致し方のないことなのですが、質問に対して通り一遍のことしか答えられない。

会社案内や学校案内では、複数人に話を聞くことも多いのですが、気を付けないとみんな同じことを話してきます。
そうすると、原稿をまとめるときに書き分けることができなくなって、非常に困ることになります。

なので、事前にインタビューシートを渡して答えを考えてもらっておいたり、アンケートシートに記入してもらって、話すことを整理しておいてもらえば、インタビューをスムーズにすすめることができます。

 

インタビュー時にやってはいけないこと

事前の準備をしておいて、後は相手のペースに合わせて質問を投げかけていけば、多少たどたどしくても、なんとかなるものです。
ところが話を聞き出そうとして、やってしまいがちなことがあります。これをやってしまうと、後で原稿を起こす際に、非常に困ることになります。

□答えを誘導してしまう

インタビューをしていると、相手が口ごもってしまうことがあります。そこで、話を先に進めたいがために、こちらで相手が考えているであろうことを投げかけて、イエスかノーで答えてもらおうとすることがあります。

例えば新入社員に「入社の決め手は?」と質問して、悩んでしまってなかなか返事が返ってこないときに、下調べしていた情報の中から「やはり働きやすい環境が揃っているところですかね」なんていう答えを投げかけると、「そうですね」と返事が返ってくる。そうなるとそれが答えになってしまいますが、それって結局自分が発した言葉で、インタビュー相手のリアルな言葉ではなくなってしまいます。
相手が答えを考えているときは、多少気まずい空気が流れても待つこと。
こちらから答えを提示して、それに相手が乗ってきても、インタビューの意味が全くなくなってしまいます。

逆に、話をさせたい内容に関しては、無理矢理にでも誘導する必要があります。
例えば「この化粧品を毎日使っているから、肌のハリやツヤが良いんですね」という問いを投げかけて、「ハイ」と答えてもらえれば、記事の中にセールスポイントをひとつ挿入することができるようになります。

□自分の話をしてしまう

これは、あるコピーライターがインタビューしていたのを横で聞いていたときの話。
そのコピーライターは、知識も経験も豊富な上にものすごく話好きだったので、相手が何か答えるたびに、そのエピソードを膨らませていったのですが、後で録音データを聞いてみると、30分くらいのインタビューで、相手の話は10分程度。ほとんどコピーライターが語っていて、結局薄い内容の記事にしかなりませんでした。

インタビュアーの基本は、質問、相づち、会話の進行管理。

インタビューをしてると、出身地が一緒だったりして盛り上がることもあるのですが、そこを膨らませたところで、目的にあっていなければ記事にできません。当然ですが、自分の話は記事になり得ないのです。

 

コピーライター的、インタビュー記事のまとめ方

インタビューを録音したデータからテキストを起こすのに、1時間の録音で5〜6時間はかかります。複数人をインタビューした場合は外注を使うこともありますが、大抵は自分で起こします。聴き取りにくかったり、専門用語で知らない単語が出てきてその度に正式な表記を調べたり、データからのテキスト起こしって相当大変な作業です。コピーライターの仕事として、一番単純でしんどい作業かも知れません。

ですが、ここまではあくまでも準備段階。インタビューをテキストに起こしてから、それをどう編集していくのかが、コピーライターの腕の見せどころとなります。

□文章を整理する

テープ起こしをした生の原稿って、そのまま読んでもほとんど意味不明です。
まずは「あの」とか「その」とか、わけの分からない間投詞を消していきます。

さらに「あれ」「これ」「それ」と言った指示代名詞が多用されているので、主語を明確にして、ひととおり意味が分かる文章に書き直します。

・それでも意味が分からないところは言葉を足して、分かるようにする。
・会話の内容を一度分解して、順序を組み替えてより分かりやすい構成にする。
・重複する内容を削除する。

以上の作業をひと通り終えて、ざっと読んで意味が通る文章になっていれば、最初の作業は完了です。

□見出しを立てる

この記事でなにが語られているのか。それを上手く切り取って、大見出しを立てます。
さらに、いつ、どこで、なんのために行ったのかというインタビューの基本情報を冒頭で伝えます。

次に整理した文章を、内容に合わせていくつかのブロックに分けます。
ボリュームにもよりますが、最低でも起・承・結の3ブロック程度に分けることで、読み手にとっては読みやすく、書き手にとっては編集がしやすくなります。

さらに、ブロックに書かれている内容が分かるように小見出しを立てれば、ひと通りの作業は終了。

これで完成。

とはいかないところが、クライアントから原稿料をもらって原稿を仕上げている、コピーライターのプロとしての仕事なのです。

□文章を書き直す

ここからが、コピーライターの腕の見せどころ。
インタビューで起こした文章は、基本的にすべて「カギカッコ」内に表記されるような口語体になっています。
それをどこまで文語体に書き直すのか。インタビュー相手や媒体に合わせて、手を加えていく必要があります。

・極力手を加えない場合

著名人へのインタビュー等、記事自体に価値があり、独立したオリジナルコンテンツとして読まれるようなものは、生の会話にあまり手を加えると、コンテンツの魅力が薄れてしまいます。

例えば、大阪弁の語り手の言葉を、読みやすさを考えて全部標準語に直したり、タメ口の言葉を「です」「ます」調に書き換えてしまうと、個性もリアリティもない、平板な記事になってしまいます。

極力手を加えずに、語り手の魅力を引き出しながら、「こんないいこと、話してたっけ?」と、語り手にも思ってもらえるような魅力的な記事に仕上げる。すべてはコピーライターの脚色力にかかっています。

・一部手を加え、さらに情報を追加する場合

例えば社長へのインタビュー記事を口語体のまま仕上げると、どうしても文章の格調が下がってしまうので、「ら」抜き言葉等の舌足らずな口語体を文語体に書き直す必要があります。

さらに、会社案内等のビジネスツールと、社内報や情報誌等のコミュニケーションツールによって、読み手との言葉の距離感、親密度を書き分けることも求められます。

ビジネスツールでは口語体を廃して、ほとんど文語体に書き直します。
コミュニケーションツールは、多少親密度を演出するために、口語体の部分を残します。

そのさじ加減も、コピーライター次第。

また、企業情報や企業活動、企業理念といった基礎情報がベースに話が展開していくことがありますが、そういった場合は、話の内容が読み手に正しく伝わるように、インタビュー時に語られていない情報も書き加えていきます。

・全面的に手を加える場合

社員や学生へのインタビューの場合、複数人を取材して掲載することがほとんどです。
そこで極力内容がダブらないように、インタビューで聞いた話の中から1〜3エピソードくらいを抽出してまとめていきます。個人のパーソナリティを記事に反映する必要もないので口語体不要。完全に内容重視で原稿を仕上げていきます。

□文章をブラッシュアップしていく

書き上げた原稿を推敲すればするほど文章は洗練されていきますが、インタビューの臨場感は薄れていきます。
とはいえ、用語の使い方は間違っていないか、固有名詞の表記は間違っていないか、統一表記はされているか、誤字脱字はないか、校閲・校正をふくめ、最初の原稿から4〜5回は見直す必要があります。

取材慣れしていないコピーライターが一番やりがちなのが体言止め。いくら全部書き直して文語体にしたとしても、体言止めの会話はめったにないので、取材記事で体言止めを多用するのはNGです。

その上で、インタビュー相手と、掲載される媒体と、読み手の距離感はちょうど良いか。クライアントの要望を反映できているか。インタビューの目的は果たしているか。といったことを見直して、レイアウトにおさまる文字数に仕上げていきます。

 

コピーライターが書くインタビュー記事とは

通常のインタビュー記事は、書いてあることが知りたくて読むもの。それ自体がコンテンツとしての価値をもっています。

コピーライターが書くインタビュー記事は、クライアントが伝えたいことを代弁するのに効果的だと思われる人をキャスティングして代わりに伝えてもらうためのもの。インタビュー記事自体に価値があるのではなく、読んでもらった上で、読者を次のアクションに導くことが重要になります。

さらに、クライアントから取材・コピーライティング料をもらって書いているので、いくら渾身のインタビュー記事を書いたとしても、ダメ出しや赤字が入ってきます。

クライアントはなぜかみんな修正したがりです。

インタビューで言っていないことまで語らせろ、と言われることも少なくありません。

クライアントが納得してはじめて、記事として発信できるわけです。

コンテンツとしての完成度だけでなく、クライアントを納得させた上で、読者に目的の行動をとらせなければいけない。コピーライターにとってインタビュー記事は、あくまでも広告コンテンツのひとつなのです。

おまけ

コピーライターって、キャッチコピーに重きを置いているがために、長文は苦手な人が多いです。
ボディコピーだって、がっつりかいても原稿用紙1枚分くらいなので、長文を扱うスキルが低い。

かつてクリエイティブディレクターから、

「ボディコピーなんてそのうち書けるようになるから、キャッチコピーを磨け」

と言われたことがあります。

が、キャッチコピーだけ書いていても、コピーライターとして稼げません。
クリエイティブの質も大事ですが、文章量で勝負の仕事もこなしていく必要があります。
これは私の父の時代から今にいたるまで、およそ変わっていません。

大量のテキストを自在に扱えるスキルが、コピーライターには必要なのです。

それを身につけるために、インタビュー記事をこなすのは、格好の訓練になります。
インタビューで聞いてきたことをテキストに起こしてリライトする。
1時間もインタビューすると、1万文字くらいのボリュームになります。
それを、要点を伝わるようにきちんと整理して読みやすく書き直す。

相当大変な作業なのですが、かなり文章力は上がります。
コピーライターの基礎能力として、ぜひ身につけて欲しいスキル。
できることなら体力のある若いうちに、ぜひクリアしておきたいものです。

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