電通の過労死問題に、広告代理店勤務のコピーライターは何を思う。

2015年12月25日、電通で働く女性が投身自殺した事件で、「仕事量の著しい増加で、残業時間が(前月の2.5倍以上に)増大してうつ病を発症し、自殺に至った」と、今年9月に労災認定されました。

事件に関する詳細はまったく知らないので、広告業界の労働環境に関する事実だけを元に書いています。

10月14日、東京労働局が電通に調査に入り、社員に違法な長時間労働をさせていないかなど労務管理に問題がないか調べを進めているそうです。

労働基準監督署では、2015年8月にも、違法な時間外労働が行われていたため、是正勧告を行い、電通では「ノー残業デー」の設定や有給休暇の取得促進などの取り組みを実施。
月45時間を超えて設定していた残業の上限時間を、11月から5時間引き下げる方針を示しているとのこと。

となると、そのしわ寄せは間違いなく、下請けの広告プロダクションに及びます。
ただでさえ、今の電通よりも劣悪な環境で働いているのに、もっとひどくなるんだろうなぁ。

 

それでも広告代理店の仕事をやりたい理由。

基本的に広告プロダクションにはクリエイティブの人間しかいないので、広告代理店からのコネで仕事をもらうしかありません。営業がいるプロダクションもありますが、メインは広告代理店への営業。自分の力でクライアントから直接仕事を取ってくることができる営業なんて、プロダクションにはほとんど存在しません。たまたま仕事を直接取れたとしても、そんなに大きい仕事は取れない。にもかかわらず、すぐに競合が現れて、気がつくとコンペになる。コンペに勝ってなんとか仕事は守れても、競合他社はコンペの際に、当然現状よりも安い見積を提示してくるので、受注金額をそれに合わせる羽目になり、気がつくとほとんど利益が出ない仕事になってしまいます。

腐っても鯛。大手広告代理店の便利屋にさえなっておけば、仕事が途切れることはありません。細かい仕事でもなんでもこなして恩を売っておき、たまに大きな仕事をもらって帳尻を合わせる。プロダクションが生き残っていくためには、広告代理店に依存するしかないのです。

クリエイティブの人間にとっても、キャリアアップするためには大手広告代理店から大手企業の広告に関わらせてもらうしかありません。どんなにいい仕事をしても、マイナーな企業の仕事では、人目に触れることなく、業界内で評価されることはない。大手企業の仕事をして初めて、クリエイターとしての箔が付くのです。

 

広告代理店の仕事をやりたくない理由。

とはいえ、私は代理店の下請け仕事が大嫌いです。だから今は小さいながらも代理店の制作として仕事をしています。CFやポスターといったおいしいところは代理店社内のクリエイティブが持っていき、携われるのはそれに付随する、細かいツールの制作がほとんど。
プレゼンの声がかかってきても、当然ながらメインの提案はさせてもらえない。
しかも広告代理店のCDやADからメインのアイデアを提示されて、それをカタチにするだけという、オペレーション的な仕事ばかり。クリエイティブの面白いところはみんな持って行ってしまい、面倒な作業はみんな丸投げ。

終電間近に、「今思いついたんだけど、明日の10時までにもう一案作っておいて」と、飲み屋から指示が来たり、「新聞の5段広告に穴あいちゃったんで、明日の朝イチまでに、〇〇社で新聞の5段広告、適当に作っておいて」なんていうのは当たり前。
金曜日の夜に、月曜日朝イチ出しの仕事の発注も日常茶飯事。

いい仕事をするというスキルよりも、どこまでギリギリで仕事をこなせるかというスキルが身につきました。

おかげでその後、どんな無茶な仕事が来ても、動じることはなくはなったのですが。

 

中・小の広告制作プロダクションの実情。

発注先がメチャメチャなら、広告制作プロダクションもメチャメチャ。そもそも自分もそういう仕事をしてきた人が立ち上げた会社なので、会社の体をなしていません。
会社として強制はしないけれど、徹夜、土日出勤しないと仕事が終わらない。
有休消化なし。残業代もなし。プロダクション勤めのクリエイターはみんな契約社員。1年契約の年棒制。最初に決めた年棒÷14で、7月と8月にボーナスとして2ヶ月分を支給。それ以上、どれだけ働いてもビタ一文、追加で支給されることはありません。

「じゃあ、よっぽど年棒もらってるんだろうなぁ」と思われるでしょうけれど、まったくそんなことはない。
おそらく今もあまり変わっていないのではないかと思いますが、相場は月給あたり年齢×1万円。
30歳なら月30万円×14=420万円。他の職種と比較しても平均値だと思います。
ただし残業代込。しかも1年契約。来年も働けるという保証なし。
相場とはいえ、実際にはそれ以下の人の方が圧倒的に多い。40歳でも20万円台のデザイナーも少なくありません。

仕事中に倒れて、救急車で運ばれて、二度と戻ってこなかった女性のデザイナー。
しばらく見ないなぁと思ったら、鬱になって田舎に帰ってしまったコピーライター。
コピーライターとして広告プロダクションに入ったら、円形脱毛症になってしまった元ヤンキー。

みんな安い給料で働いているのに。

広告プロダクションに労働基準監督署が入ったら、100%倒産します。

広告プロダクションの利益のほとんどは、時間外労働をチャラにしているところから得ているのだから、正当な給料と休暇を与えたら、仕事もお金も回らない。

広告プロダクションなんてとっくの昔にビジネスモデルとして破綻しているのに今もなんとか回っているのは、サービス残業による生産性の向上に支えられているだけです。

電通を叩いたところで、下請けがさらにブラック化するだけなのに。

 

広告プロダクション勤めを辞めて、本当に良かった。

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