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グラフィックデザイナー採用活動から見た、広告業界生き残り事情。

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現在勤務している広告代理店にて、デザイナー不足につき中途採用中。

リクナビ、ファインドジョブ、クリエイターズNAVIに求人を出し、スカウトメールも合わせると50人以上のデザイナーが応募してきて、20人くらいを面接させていただきました。

そこから垣間見えてくる、グラフィックデザイナーの現実をレポートします。

 

Contents

グラフィックデザイナーの求人事情。

現在、かなりの勢いで中小の広告代理店やプロダクションが減っています。

というのも広告制作物がアホみたいに減っているから。特に新聞折込チラシの減少は致命的です。

多くの広告制作会社は、そこそこ金額が取れて(最近ではそうでもありませんが)、月に何本かレギュラーで入ってくる新聞折込チラシに依存しています。

ところが今では新聞が、読者の高齢化と大幅な減少によって、ニッチな媒体になってしまい、ほとんどの企業が折込チラシをやめたり減らしています。

で、毎月折込チラシの入金でなんとか自転車操業していた広告制作会社の資金がショート。どんどん潰れていく。

そうすると、その会社がやっていたチラシ以外の仕事が宙に浮き、生き残っている広告制作会社に、潰れた会社の仕事が舞い込んでくるので仕事が増える。

というわけで、デザイナーの求人を出している会社は結構あります。

逆にグラフィックデザイナーの応募があるのかどうかというところがかなり気になっていたのですが、思った以上にありました。

ところが実は、かなり残念な感じになっているのです。

応募してくるグラフィックデザイナー事情。

応募してくるグラフィックデザイナーは、圧倒的に高齢化しています。

今回は即戦力が欲しいので、経験3年以上としていることもあるのですが、応募してくる人の9割が40歳以上です。

20代は皆無。30代も後半ばかり。

30代前半で仕事ができるデザイナーは、いいところに就職してしまっているのだろうとはいえ、まったく応募がない。

 

職歴を見ればだいたい使えるかどうかはわかるのですが、それでもその向こう側にどんな人材が隠れているかもわからないので、それなりにキャリアがある人には、年齢を考えず、面接に呼んでいます。そして、面接の際に、当然のごとく職歴の詳細を聞くのですが、その向こう側にあるストーリーを聞くと、みんな不幸過ぎてきつい。

行くところ行くところ業務不振でリストラされたり、入社前と話が違う完全ブラック企業だったり、20年以上フリーでやっていたのに仕事がなくなったり、40歳過ぎても給料が10万円台だったり。

明日はわが身、というよりも、グラフィックデザイナーより潰しのきかないコピーライターとしては、本当に自分もギリギリのところで生きているんだなぁと、身につまされます。

というわけで、若くて使えるデザイナーはいない。

応募してくるのは40歳以上。

実は50代も多いのだけれど、年齢とスキルと給料のバランスを考えると、さすがに採用するのはきついですね。

職場の高齢化止むなし。40代前半でも採用せざるを得ない。というのが、リアルなところです。

 

これからのグラフィックデザイナー事情。

日本の広告プロダクションのトップ、ライトパブリシティでは、グラフィックデザイナーを育てるために、高卒でアシスタント採用をしているそうです。

3年でもペーペー、10年で半人前、20年くらいでようやくものになって、50代で中堅。70代のアートディレクターが現役でバリバリ仕事をしている。そんな浮世離れした世界なので、大学の4年間がもったいない。その間現場でデザインをみっちりと学んだ方が力がつく。

もはや伝統技術の継承。

それはそれで、デザインクオリティを守っていくための、ものすごいこだわりと責任感だと思います。

とはいえ現実はそんなにのんびりできるわけがなく、10年と言わず1〜2年くらいで育てなければ、若くて腕のいいグラフィックデザイナー不足状態から抜け出せなせん。

美大卒のグラフィックデザイナー志望が見込めない中(一昨年、新卒採用で美大に求人を出したのですが、グラフィックデザイナーになりたい!という学生はほとんどいませんでした)、それでも新卒の採用と育成に力を入れて地盤沈下を防いでいかないと、これからの広告のクオリティが本当に不安です。

とはいえキャリアのあるアートディレクターは、後進の育成をするという重要な役割も担っているはずなのですが、自分の仕事もままならないのに育成なんてとても無理。残念ながら人材不足は、恒久的なものになりそうです。

 

それにしても、不採用にした方々、本当にごめんなさい。今後のご活躍を、心よりお祈りしております。

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