横浜、曙町にて。スジの人に関わってはいけない、たったひとつの理由

昔ながらの繁華街、伊勢佐木町界隈。週末ともなると、カップルや家族連れで賑わうショッピングスポット。なのですが、一歩裏道に入ると様相が変わります。

福富町、長者町、曙町、黄金町、末吉町、ちょっと離れて扇町、寿町・・・

組の事務所があり、スジの人たちもがあちこちにウロウロしていて、どこもカタギが踏み入れてはいけないエリアです。

fukutomi

とはいっても普通にしていれば、ヤクザの方からカタギに関わって来ることは滅多にありません。

 

ところが、酒が入るとそういうわけにはいかないこともあります。

「兄ちゃん、酒おごってやるから一緒に飲もうや」

平成の初め頃、ファッションヘルス街になる前の曙町・親不孝通りにあったブルーズバー、トムソーヤのカウンターでひとり飲んでいると、テーブル席で飲んでいた、いかにもヤクザと分かる風体の団体が声をかけてきました。

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スキンヘッド、パンチ、角刈り、白のスラックスに和柄のアロハの5人。

さすがにこれは一緒に飲んだらヤバイと思ったのですが、どう断って良いかわかりません。

すると、カウンターの中にいたマスターが急いで出てきてそのテーブルに座り、

「私に一杯おごっていただけますか」

と割って入ってくれました。しばらく楽しそうに飲んでいたのを、私は背中で聞きながら、マスターに感謝しました。

ヤクザの団体が帰った後で、

「カタギに声をかけるなんて田舎者だね。ヤクザの借りは3倍返しが相場だから、絶対におごってもらっちゃ駄目だよ。」

と教えてくれました。

曙町

トムソーヤは場末の小さなブルーズバーだったにも関わらず、月に一度、必ずやってくる常連のヤクザもいました。そのヤクザはブルーズが好きなわけではなく、トムソーヤと同じ建物に入っている、“ベイブリッジ”という台湾人女性専門の売春パブで、一度に5人くらいの女性を買いっていました。“ベイブリッジ”は2時までだったので、店が終わると朝までやっているトムソーヤに連れてきて、一緒に飲んでいました。

いかにもヤクザ然としていたので、極力近づかないようにしていたのですが、騒いだり暴れたり、女性とイチャイチャすることもなく、いつも黙々と飲んでいました。

そして、毎月顔をあわせていたので挨拶くらいはするようになりました。

1年くらい経った頃、テーブル席で飲んでいたその常連が、カウンターで飲んでいた僕に話しかけてきました。

「俺はヤクザをやっている」

他に客はいませんでした。相変わらず数人の女性を連れていました。女性の趣味はあまり良くありませんでした。

「俺はここから3時間くらい離れた小さな地方都市で、小さな事務所を構えている。ヤクザやってるとたまに息抜きをしたいけれど、地元じゃ、どこへいっても顔が割れてるから、落ち着いて飲めやしないし、女も買えやしない。だから毎月一晩だけ100万持って、俺のことなんか誰も知らない横浜までやってきて、羽根を伸ばしているんだ」

ヤクザは勝手に身の上話をはじめました。地元の店に行くと、みんな気を使ってくるからこっちも息抜きできない。かといってちょっと離れた店に行くと、そこのシマを仕切っているヤクザから、何しにきたんだっていう目で見られて、落ち着けない。

なんだか話してみると、ヤクザもいろいろ大変なんだなぁ。ヤクザだって普通のオッサン何だなぁと思い、僕は酒の勢いを借りて聞いてみました。

「なんでヤクザやってるんですか」

 

ヤクザは答えました。

「イイ服着て、イイ物食べて、イイ女を抱くためだよ。そのために人を殺せるのがヤクザだ」

 

二度とヤクザには関わらないようにしようと、心に決めました。

 

 

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